現在のお仕事について教えてください。
落語家です。私は立川流という団体に所属しています。今年の10月1日に真打に昇進しましたが、落語家としてのキャリアは16年半になります。
落語、そして立川志の輔師匠との出会いについて教えてください。
大学生時代に毎月アルバイトで稼いだ1万円の中から、ジャケ買いでCDを3枚選ぶのが楽しみだったんです。
あるとき、CDショップで落語のコーナーが大きく取り上げられているのを見ました。それまで音楽ばかり聴いていて、芝居以外の文化にはあまり触れてこなかったので、「たまには違うものを聴いてみよう」と思ったんです。それが立川志の輔師匠の落語が収録されたCDでした。
当時、師匠のことは、NHKの司会をしたり、焼きそばのCMに出たりしている、テレビで活躍するタレントのような人だと思っていました。
ところが、家に帰って聴いてみたら、死ぬほど面白かったんです。それが、志の輔師匠との出会いでしたね。
大学生時代はどのように過ごしていましたか?
大学3年生くらいからは、ほとんど大学に行かず、パチンコばかりやっている不真面目な学生でした。
小学4年生のときに桑田佳祐さんを知って以来、ずっとファンなんです。今も変わらず好きですね。それもあってか、そもそも僕は音楽の道に進みたかった人間なんです。音楽が大好きで、今でもそれは変わりません。学生時代はライブハウスなどで歌っていて、できればプレイヤーとして生きていきたかった。
仮にプレイヤーになるのが無理だったとしても、裏方など、何らかの形で音楽に携わる仕事がしたいと思っていました。

どのようにして弟子入りに至ったんですか?
弟子入りしようと思ったのは、初めて落語を聴いてから2年後でしたね。うちの師匠のルールとしては両親ともに賛成してもらうことだったので大変でした。パチンコしか言っていなくて留年も決まっている息子がそんな厳しい世界で続くわけがないと思ったんでしょうね。ただ大学の卒業証書を持ってきたら許してやると言ってもらい、必死に大学に通い無事卒業できました。
みなさんのイメージだと楽屋口に立って師匠が出てきたら土下座して弟子入りさせてくださいという風に思っている方もいると思うのですが、僕の場合は当時師匠の個人事務所のホームページに電話番号が書いてありまして、ダメもとで電話してみたらマネージャーさんが出てくれて履歴書となぜ入門したいのかを10枚でも20枚でもいいから便箋に書いて持ってきてくださいって丁寧に案内してくれたんですよね。ちょうど師匠も運転手が欲しい時期だったのか、タイミングも良く無事に入門することができました。
弟子入りできる人と、できない人には特徴がありますか?
師匠のもとに入門できた人たちに共通しているのは、志の輔一門の全員の名前を言えたことですね。
今は何でも調べられる時代なのに、調べない人がいる。それが不思議なんです。
昔の人のほうが、むしろよく調べていた気がします。今ならスマートフォン1台あれば基本的に何でも調べられるのに、逆に調べなくなっているんですよね。

表現者として大切なことは何だと思いますか?
エンターテインメントをやるうえで、表現者は我慢と辛抱を知らなければ、人の心に届く表現はできないと思っています。
今の時代は、とにかく自分がいいと思ったものを出せば、それが正解だと考えがちです。でも、それだけでは人の気持ちはわからないんですよね。
我慢や辛抱を経験しなければ、人の気持ちを理解することはできない。そうした経験がなければ、お客さんを喜ばせることもできないと思っています。
芸人にとって、修業とは何でしょうか?
芸人としての修業に、完成というものはないと思います。
死ぬまでに芸を完成させられるかどうかもわからない。だからこそ、芸の修業はずっと続いていくんです。

これから、どのような落語家になりたいですか?
それを考えながら死んでいくのが、落語家というものなんでしょうね。
スポーツと違って、芸事の一番難しいところは、100人のお客さんがいたら100人全員が「いい」と思ってくれるわけではないことです。
それでも、一人でも多くの人を、生の舞台で笑わせ、感動させたい。板(舞台)に立ち、自分の芸で勝負していきたいですね。
あなたにとって、エンターテインメントとは何ですか?
生きる糧というか、人生のすべてじゃないですかね。

立川志の太郎
出身
埼玉県
職種
落語家
経歴
本名小川輝。 1985年埼玉県ふじみ野市出身の立川志の輔門下6番弟子。 2010年4月志の輔に入門。 初高座は同年10月「志の輔のこころみ」にて”つる”。 2015年4月1日、二ツ目に昇進。 年間約300席をこなし、古典落語を中心に身近なテーマを題材にした新作落語も意欲的に創作している。 ドラマや映画出演の俳優として、また声優やナレーターとしての一面もあり、アコースティックギターを愛し自身が出演する音楽のライブ公演も主催している。 2025年10月に「真景累ヶ淵」、12月に真打昇進を賭けた独演会を座・高円寺にて開催し、どちらも即日完売となる。 これを受けて2026年10月1日より真打昇進が決定し、10月12日(祝)に虎ノ門ニッショーホールにて、真打披露公演を主催。完売させる。

