学生時代は、下西さんはどのような学生でしたか?その頃からエンタメ業界を目指していましたか?
当初、エンタメ業界は目指していなくて、高校生の頃はビジネス書を読むのにはまっていました。中学生の頃に『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 』という本に出合って、その本がめちゃめちゃ面白かったんです。そこからビジネスに興味を持ったと思います。ビジネス書を読んでは、分析するのを繰り返していました。例えば、当時は吉野家が好きだったのに、すき屋に負けていたことに納得がいかなくて、吉野家とすき家と松屋の業態分析をしたり。高校の先生に褒めてもらった記憶があります(笑)その頃は、経営コンサル…具体的には吉野家の取締役になりたかったですね。
なるほど。学生時代は、ずっと経営の本を読み漁っていた感じですね…すごい。現在はご自身でアイドルをプロデュースなさるほどの「アイドルオタク」でいらっしゃいますが、そのきっかけはなんでしたか?
一番はじめのきっかけは、中3の受験が終わった時に、友達が握手会の感動を生電話で訴えてきたことでしたね…確かこじはると握手したらしく。それまでは、アイドルとかオタクとかとは、ちょっと線を引いていたくらい、全く興味はなかったです。
でも高校生になってその友達と一緒に握手会に行ってから、はまってしまいました。田舎育ちだったので、有名なテレビに出てる芸能人に会えるというだけでもすごいことだったんです。そこからは、学校でもアイドルオタクとして周りから認識されるほどに、のめりこんでいきました。SKE48が好きだったので、名古屋の大学に行こうかと思ったくらいです(笑)
それほど一気にアイドルにはまっていったんですね。エンタメを受ける側ではなく、作る側として関わるようになったきっかけはありますか?はじめの一歩 (最初に作ったものや、踏み出した瞬間など) を教えてください。
高2の文化祭のクラスの出し物で、ショートムービーの監督を務めたことが、作る側としてのはじめの一歩だったと思います。クラスでの出し物を決める時間があまりに盛り上がっていなかったので、後ろの席の悪友になんとかしてこいと言われ、クラスの笑いをとる目的で「AKB48の歌からインスピレーションを受けた恋愛ショートムービーを制作しよう」という企画を立て、自分の頭の中の妄想を黒板に書いてありったけ語りました。そうしたら、そんなにアイデア固まってるんだったら自主的にやってみたらと担任の先生に言われまして、あれよあれよと自分が監督となり、何人かメンバーを誘って夏休みをかけて映画撮影を行うことになりました。親には「塾に行ってきます!」と嘘をついて映像を撮ってたので、後からかなり怒られましたね(笑)でも、これがめちゃくちゃ楽しかった。この経験が無かったら、作り手側に立とうと思わなかったと思います。
今もその映像は残っていますか?
結局は編集担当の作業が間に合わなくて、クラスには披露できなかったんです。でも脚本を書いたり撮影をしたりするプロセスが何よりも楽しかった。大学生になって就職を考えたときも、この経験があったから、エンタメ業界が候補に挙がったんだと思います。

ひと押ししてくれた、後ろの席の同級生には感謝ですね。
頭の中で構想を練ることや、妄想することは好きでしたが、実際に自分にできるとは思っていませんでした。だからこのひと押しのおかげだと思っています。そして実際にやってみたら、めちゃくちゃ楽しくて。その姿を見ていた同級生や同級生の親御さんたちに「下西くんはエンタメ業界に進むのかもね」と言われたときに、実際に仕事にするという選択があるんだと、初めて意識したような気がします。
実際に好きなものを仕事にする大変さはありますか?
「好き」がゆえに、そのものに対する考えが固定されてしまう感じはあります。例えば、アイドル好きの自分がアイドルをプロデュースするとなると、「アイドルはこういうものだ」という考えから、なかなか今までにない企画ができないというか…。一方でVTuberのコンテンツをつくったときは、VTuberやボーカロイドにうとかったため、こうあるべきという固定観念が無かったからこそ、柔らかい発想ができたような気がします。
好きだからうまくいくこと、好きだからこそうまくいかないこと、これは50:50ですね。と言いましたが、秋元さんは超アイドルオタクみたいなので、どちらが正解とは言えないかもしれません。つまりは、それを突き詰めてた結果うまくいくかどうかは、その人次第、かつ運次第だと思います。
エンタメ業界を目指す学生たちに、重要なことは何だと思いますか?
エンタメ業界は、特に人との繋がりが重要だと思います。キャスティングを考えるときにも、数字的な利益だけではなく関係性によることが多いので。自分の会社の行動指針にも「義理と人情」を挙げています。エンタメ業界は恩を受けたら返すという文化の上で成り立っていると思います。だからこそ人との繋がりを大切にできる人が、最終的にはうまくいくんじゃないかなと思います。
下西さんにとって、エンターテイメントとは。
『幸せになる手段』です。明日が楽しみになる、今日めちゃくちゃ楽しかったと思える手段の中で、最もその効果が高いものだと思います。
下西竜二
出身
広島県
職種
OTAGROUP株式会社 代表取締役プロデューサー
経歴
高校時代にアイドルオタクに目覚めたことからオタクが働きやすい環境を整えた会社を創るべくOTAGROUP株式会社を創業。アイドル・モデル・VTuber・メタバースコンテンツなどエンタテインメント領域で幅広くプロデュースを手掛ける。 後期高齢者VTuber「メタばあちゃん」では自身の祖母をプロデュースし、週刊朝日「2023年100人の顔」に選出される。世界経済フォーラム(ダボス会議)により組織されるU30の団体にてグローバルシェイパーとしても活動していた。