『テレビドラマのプロデューサー』とはどんな仕事なんでしょうか?
テレビドラマの企画が立ち上がったときに『一番最初に仕事を始めて、一番最後に仕事を終える人』っていうのが分かりやすいかもしれませんね。
「ドラマを放送する」という目標を達成するために必要となる、企画の立ち上げ、脚本制作、スタッフ集め、キャスティング、予算管理……などほぼ全てに携わっています。
そして、撮影が始まったら現場管理を行ったり、放送に向けてはプロモーション戦略を練ったり。
ドラマが放送された後は、グッズのライセンス化や配信の戦略を立て、放送後のクレーム対応とかもしながら、与えられた予算にしっかりと着地させて終了となります。
なのでプロデューサーには「他の人がやらないあらゆることをやる」みたいなイメージがありますね。
「エンタメ業界で働きたい!」と思ったのはいつ頃ですか?
教育に関する専門知識を学ぶ中で、大学2年生くらいのときに「教師とは子供たちが社会に出るために必要なことを教える仕事なんだ」ということを自分なりに解釈しました。
そこから「大学を出てすぐの人間が子供に何かを教えられるのか?」と疑問を抱き始めまして、「『教師になる!』という夢を叶える前にまずは社会に出てみよう」と思ったんです。
「教師になりたい!」と思ったきっかけがテレビドラマだったので、テレビ業界に入りました。
子供の頃からエンタメ業界に興味があったのですか?
いえ。金八先生の第五シリーズを見て「教師になりたい!」と思い大学は浪人して、教育学部に進学しました。
学生(高校生/大学生)の頃熱中していたエンタメが関係あるのでしょうか?
実は「ドラマとか映画がめちゃくちゃ好き!」っていう時期がなくて……高校生ぐらいから何にも熱中できない人間になってしまってるんですよね。一つの物事を死ぬ気でやって、何かをやりきった経験も2~3回くらいしかありません。
なので今の自分のルーツがどこにあるかは分からないですね。ドラマを見ていた記憶よりもアニメを見ていた記憶の方が多いですし。
でもやっぱり、この業界には映画オタクやドラマオタク、本や小説を読み漁ってるような人達がうじゃうじゃいて、引き出しの多さという意味では勝てないな……という劣等感はあります。
学生(高校生/大学生)の頃しておけばよかったなと思うことはありますか?
さっきの話とも繋がるんですけど、やっぱり「引き出しの多さ」って絶対に年数の蓄積には勝てなくて。
小さい頃から毎日映画を一本見てる人には、今からどう頑張っても追いつけないんですよね。
だから、もし高校、大学の時に「テレビドラマのプロデューサーになりたい!」と思っていたなら、もっとインプットを増やしていたかもしれません。
ただ、自分がその頃過ごした時間をインプットに充てていたら、今の僕には絶対なってないので、そこは後悔していません。
僕としては「映画オタクでもドラマオタクでもない、ましてや本も全く読んでいない人間がドラマのプロデューサーになるとどうなるのか?」という新たなサンプリングをやっている気持ちです(笑)
学生(高校生/大学生)の頃にしていたことが今の経験に繋がっていることはありますか?
高校は80人くらいの野球部で、大学の時は100人くらいの英語サークルの幹事長をしていました。
特にサークルではすごくモチベーションのある人とそこまでない人がいる中で、「全員を同じ目標に向かって動かす」ということをとにかくやっていたので、それはプロデューサーとちょっと似ているかなと思いますし、今の仕事にも生きている気がしますね。
逆に言うと、映画オタクやドラマオタクじゃなくて、今別のことに打ち込んでる人でも「テレビ業界に入りたい!活躍したい!」と思えば、自分の身につけた力を生かして頑張ることが出来る業界だと思います。
エンタメ業界を目指す学生(高校生/大学生)へのおすすめ勉強法があれば教えてください!
インプットの数を増やすよりも自分が好きなものをとことん突き詰めて、それを深く研究していくのがいいと思います。
というのも、ヒットメーカーと呼ばれる先輩に、色々なものを手当たり次第インプットするのではなく、ひたすら大好きな映画30本くらいを何度も繰り返し観てたという先輩がいて、僕なりに解釈すると、そうすることで「なぜ好きなのか?」「何がウケているのか?」「ここのキャラクターのこういう描き方が素晴らしい」など、自分なりの解が見えてくるんだろうなと思っています。
テレビドラマの仕事に関して言うと「いかに間口が広いものを届けつつ、深く掘り下げていくか」っていうことがテーマだと思っているので、大多数にいいとされているものを素直に受け取る作業は必要かなと思いますね。
飯田さんにとってエンターテイメントとは?
『心を揺さぶるもの』です。
心で感じることって歳を取るとなかなか難しくなってくるんですけど「何歳の人の心であれ揺さぶることができるもの」っていうのが究極のエンターテイメントなのかなって思います。
最後にエンタメ業界を目指す学生(高校生/大学生)に一言お願いします!
「自分がどうありたいか」という感情に対して素直にリアクションをして「本当になりたいもの」や自分自身の「未来図」があるのならば、まずは怖がらずに一歩を踏み出してみることが必要だと思っています。
社会に出ると基本的には一人でなし遂げられることってほぼゼロに等しくて。
そこには、手伝ってくれる人とか、はたまた反面教師になってくれる人とか、いろいろな人との繋がりを持つ中で成し遂げられていきます。
なので、とにかくまずは一歩を踏み出してみて『誠実に、真摯に、謙虚に人のお世話になる』ことが出来れば、自分自身の力で成し遂げたっていうことでなくても、道が開けると思います。
なので、まずは一歩踏み出すということですかね!
飯田さんのバイブル作品
スラムダンク、幽遊白書、るろうに剣心
小、中学生の頃からハマり、色んなターニングポイントで読み返している作品です。
全てが究極の人間ドラマであり、究極の愛の物語な気がしていますね。
家族であれ、恋人であれ、上司と部下であれ、ドラマを描くうえで『愛情』の部分は絶対に外せないものなので、バイブルと言えばバイブルかもしれません。
飯田和孝さんがプロデューサーを務める、TBS系日曜劇場「御上先生」が、3月23日(日)よる9時~に最終回の放送を迎えます!ぜひご覧ください✨
飯田和孝
出身
埼玉県
職種
ドラマプロデューサー
経歴
TBSドラマプロデューサー 埼玉県熊谷市出身 『御上先生』『アンチヒーロー』『VIVANT』『私がヒモを飼うなんて』『マイファミリー』『ドラゴン桜(2021)』『集団左遷!!』『義母と娘のブルース』等多数のドラマを手掛ける。 『VIVANT』では、2024年度エランドール賞プロデューサー賞を受賞。 最新作『御上先生』では、社会問題のテーマの中に人間ドラマを描き出すことで、視聴者が深く考えるきっかけとなっている。